友人を「お客様」にすることの注意点

社会人として働く期間が長くなると、ときには友人と仕事をする機会も出てきます。

私の仕事は、高額な商品を扱い、お客様と1年以上の時間をかけて、商品が完成するまで一緒に取り組んでいく仕事です。

仕事の経験も積み、少しずつ自信がついてきた頃、ある友人から仕事の依頼を受けました。

今回は、その経験を通して感じた「友人をお客様にすることの難しさ」についてお話ししたいと思います。

友人に仕事を依頼されたときの気持ち

「あなたにお願いしたい」

そう友人から言われたときは、純粋にとても嬉しかったことを覚えています。

金額が大きく、完成までに時間もかかり、失敗が許されない仕事だからこそ、多くの方は条件だけでなく、担当者を信頼できるかどうかも重視します。

そんな中、数ある依頼先の中から自分を選んでくれたことが嬉しくて、「なんとかよくしてあげたい」という気持ちが強くなっていきました。

その結果、普段のお客様以上に誠意を持って対応していたと思います。

休日に届いた些細な連絡にも対応し、金額や内容についても満足してもらえるよう、できる限りのことをしていました。

しかし、一緒に仕事を進めていくうちに、少しずつ友人に対する違和感を覚えるようになっていきました。

仕事をしていく中で見えてきた「友人の別の顔」

プライベートでのやり取りでは、これまで特に違和感を感じたことはありませんでした。

ところが、仕事に関する確認事項や共有の連絡をしても、返事がないことが増えていきました。

一方で、友人自身が確認したいことについては、休日や時間帯を問わず連絡が入ります。

私はモヤモヤを感じながらも、「友人だから」という気持ちから、業務時間外でも変わらず対応し続けていました。

そんなやり取りが続くうちに、次第にこんな思いが湧いてくるようになりました。

「こちらは誠実に対応しているつもりなのに、その気持ちは伝わっていないのかな……」

「自分たちにとって、都合のいい相手だと思われているのではないか?」

相手に喜んでもらいたいと思って始めた仕事だったはずが、いつの間にか、関係性が対等ではないように感じるようになっていたのです。

トラブル発生、そして精神的な限界へ

計画は順調に進み、商品も完成間近となった頃、トラブルが発生しました。

一つ目は、商品の一部が予定していた納期に間に合わなくなったこと。

二つ目は、友人が購入を予定していた商品が、想定していた場所に設置できないことが判明したことでした。

一つ目のトラブルは、こちら側の関係者のミスが原因だったため、費用の一部をサービスする形で補償しました。

一方、二つ目のトラブルは、友人を含めた関係者間での確認不足が原因であり、誰か一人だけに責任があるとは言い切れないものでした。

しかし、友人からは、

「納得がいかない」

「そちらでも事前に想定できたのではないか」

と、厳しい指摘を受けました。

確かに、こちらがもう少し配慮していれば防げた可能性はありました。

その点は反省すべきところです。

ただ、原因や経緯を考えると、こちらに向けられる責任の大きさに、理不尽さを感じる部分もありました。

最終的には、友人との関係性も考慮し、こちらで費用を負担して対処することにしました。

それでも、これまで誠実に対応してきたつもりだっただけに、それまでの経緯がなかったかのような言動や対応に、精神的に大きく消耗してしまいました。

そして、この経験を通して、あることに気づきました。

このとき友人が私に求めていたのは、「友人としての対応」ではなく、「お客様としての対応」だったのだということです。

「友人」と「お客様」の境界線

友人として考えれば、少し寂しさを感じる対応でした。

しかし、仕事として考えれば、お客様から厳しい指摘を受けたり、こちらが想定していなかった要望を求められたりすることは、決して珍しいことではありません。

問題は、相手の態度そのものだけではなく、私自身が「友人」というフィルターを通して相手を見ていたことにもあったのだと思います。

友人だからこそ、気持ちを汲んでくれるだろう。

友人だからこそ、こちらの事情も理解してくれるだろう。

そんな期待が、知らず知らずのうちにあったのかもしれません。

人は感情が入ると、普段ならできる冷静な判断が難しくなることがあります。

仕事では、相手との個人的な関係にかかわらず、一定の距離感を保ち、立場や責任を明確にすることが大切です。

たとえば、教育や保育の現場で自分の身内に関わる判断を慎重に扱ったり、警察が身内の関係する事件から担当者を外したりするのも、公平性や客観性を保つためです。

それと同じように、仕事においても、個人的な感情が判断に影響しないようにすることが大切なのだと感じました。

友人をお客様にするなら、それ相応の覚悟が必要

今回の経験を通して、私は「友人はお客様にしない」という考えに至りました。

もちろん、友人と仕事をしてうまくいくケースもあると思います。

ただ、友人だからといって、仕事でもお互いを思いやれるとは限りません。

むしろ、友人だからこそ期待してしまうことがあり、友人だからこそ断りづらいこともあります。

業務時間外でも対応してしまったり、通常よりも無理をしてしまったりすることで、自分自身の負担が大きくなることもあります。

そして、仕事上の問題が、プライベートの関係にまで影響してしまう可能性もあります。

だからこそ、友人から仕事を依頼されたときには、嬉しい気持ちだけで引き受けるのではなく、仕事として適切な距離感を保てるか、トラブルが起きたときにも冷静に対応できるかを考える必要があると思います。

友人との関係を大切にしたいからこそ、仕事とは切り離して考える。

それも、一つの大切な選択なのではないでしょうか。

私自身の経験が、これから友人と仕事をする機会のある方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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